『夫婦の愛①』の続きです
夫婦となったからには、ふたりでいい関係を築いていってほしいと思いますが、それには、ふたりの足並みがそろわないとうまくいきません。夫婦の関係を、奥さんの考え違いで壊してしまったケースをご紹介したいと思います。
その方は、教員をされている夫と共働きで、三人のお子さんを育てている四十歳代の女性。その日は、ご主人との離婚問題で相談に見えました。
彼女が言うには、ご主人は性格はいいものの、結婚以来、見た目の野暮ったさが鼻につき、見るたびに腹が立ったといいます。そんなご主人への不満から浮気をし、息子さんには毎日のようにご主人の悪口を言っていたそうです。
そんなある日、息子さんから「お父さんから、『お母さんのことを頼むよ』って言われたよ」と言われて驚き、すぐに確かめたところ、なんとご主人のほうが、そのときすでに離婚届を用意していたのだそうです。
そこで、彼女がご主人に問いただすと、
「お前のことは、自分には過ぎた嫁だとずっと思ってきた。でも今は、人生をやり直したいと思っている。どうか離婚してほしい」
と言われ、さらに同じ教員仲間で好きな人ができたと告げられたそうです。
そのご主人は、妻の浮気に気づいても、野暮ったいと蔑むような目で見られても、自分さえ我慢すればと、ひたすら耐えてきたのでしょう。そんな寂しい心でいるところに、心と心を通い合わせることのできる女性が現れた、ということです。
そして、根が真面目なご主人のこと、中途半端なことはできないからと、相手の女性にもすべての事情を話し、よく考えたうえで、奥さんに離婚を切り出した、という様子が、私には見て取れました。
その一方、彼女のほうはというと、たとえ夫婦の仲とはいえ、こんな見た目のさえない夫を好きになる女性がいること自体、最初は信じられなかったそうです。でも、徐々に事態が飲み込めるようになると、あれだけご主人の悪口を言っていただけに、そのご主人から離婚を言い出されたことで、よほどプライドが傷ついたのでしょう。
「あなたは分不相応な妻をもらっておきながら、離婚したいだなんて許せない! 私は絶対、死んでも籍を抜かないから!」
と、怒鳴ったのだそうです。
それでも、ご主人の気持ちは変わらず、困り果てたあげくに、「どうすれば離婚しないで済むでしょうか」と、私のところに相談に見えたわけです。
さっそく透視をしてみますと、神は私にこうおっしゃいました。
「ご主人の意志は相当に固い。何を言っても気持ちは変わらないぞ。だから、籍を抜いて、もう解放してあげたほうがいい」
それで、彼女にそのように伝えたのですが、頭に血がのぼった彼女の心には届かなかったようで、納得しないまま帰っていかれました。
この話には、まだ続きがあります。
彼女は、後日、今度はご主人を連れて、再び私のもとを訪れたのです。
そこで、ご主人のほうに話を聞くと、
「自分にとっては、とても大事な妻でした。でも、妻が私の母親のことを毎日のように悪く言い、それだけはどうしても耐えられませんでした。今思えば、あれ以来、妻から気持ちが離れていったように思います」
と、正直に話してくれました。
さらに、そのご主人は、離婚を切り出したあと、妻の母が、自分の母親の家まで押しかけてきて、「お宅のような家だから外に女を作るんだ」と罵倒したり、また、自分の職場にまで毎日のように連絡をしてきていた、とも言っていました。そのために、ますます心が疲れてしまったといいます。
奥さんのほうは、ご主人をここに連れてきさえすれば、何とか離婚を思いとどまってくれると期待していたようですが、神の回答は前回と同様、
「もう引き留めるのは無理だ。離婚を認めてあげたほうがいい」
というものでした。私がそのことを告げると、彼女は、それこそ拝殿の天井が張り裂けるのではないかと思うぐらいの悲鳴を上げ、身をよじりながら泣き叫ぶのです。するとご主人は、そんな妻の姿を冷静な目で見つめながら、私にこう言いました。
「私は、妻のこの姿がずっといやだったんです。自分の思いどおりにいかないことがあると、相手の立場も考えず、このようにいつも泣き叫んで、自分の意見を通してきたんです」
この言葉を聞いた私は、このご主人は今までどれほど忍耐し、我慢をされてきたのかと、同情せずにはいられませんでした。
彼女が、もう少し前に、自分の愚かな行動に気づいて直していたなら、離婚は避けられたかもしれませんし、子供も苦しむことはなかったはずです。それを考えると、残念でなりません。加えて、彼女の母親の、人生の先輩としての指導力不足も見逃せません。まさに、カルマの力が働き、彼女自身がこの母親を選んで生まれてきたといえるでしょう。
世の中の夫婦の中には、どちらかのカルマを清算するために一緒になる方もいます。しかし、 たとえ苦難の多い結婚であっても、努力によってカルマを乗り越え、仲のいいご夫婦になることはいくらでも可能なのです。
この広い世界で巡り合い、夫婦となった特別なご縁を、良縁にするか悪縁にするかは、結局は、その方の心次第といえるのです。
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