「女、三界に家なし」という諺があります。
大辞林によりますと、三界とは仏教用語で、欲界・色界・無色界というこの世の三つの世界の総称で、いわば全世界のこと。女性の人生は三従といって、幼いときは親に従い、嫁に行っては夫に従い、老いては子に従わなければならないとされるので、女性は一生の間、広い世界のどこにも安住の場がない、という説明がありました。
かつての封建時代、男尊女卑だった旧時代に女性の地位が低かったことを表した諺ですが、明治生まれの私の母親の時代にはまだこういった風潮が色濃く残っていたのではないかと思います。
その頃と比べて、今や時代は大きく移り変わりました。
男女同権ということで、職業を選ぶ際の選択肢も大きく広がりましたし、私のところにご相談に来る方々を見ていますと、ご主人にただただ従わなければならないといった立場にある主婦の方はほとんどいらっしゃらないように思います。それよりも、女性のほうが一家の実権を握っているケースのほうが多いくらいではないでしょうか。
先の諺は、女性として生まれてきたからには、どこにも安住の場はないと思って今の生活に耐えなさい、という教えとも言えるのですが、そのように考えますと、ひたすら耐え忍ぶしかなかった窮屈な立場、存在から、女性が解き放たれる時代になったわけですから、時代の変遷はおおいに喜ぶべきことと言えるでしょう。
しかし、その一方で、女性として生まれてきたという意識が薄れたり、さらに、かつてあった “耐える強さ” など、女性ならではの美徳までもが失われつつあるように思うのです。
ここでひとつ、みなさんに質問したいと思います。
“女性として生まれてきた”ということを、普段、どれだけ意識していらっしゃるでしょうか?
「女性であることはもちろん間違いないけれど、普段は、ことさら女性であることを意識していない」
「若いころはおしゃれやヘアスタイルを女らしくすることに一生懸命だったけれど、今は女性であることを、前ほど気にしていない」
といった人が多いのではないでしょうか。
「結婚や子育てを経て、60代に差しかかってからは、若い頃とは別の意味で女性の人生ということに関心を持つようになった」
という人もいるかもしれませんし、もしかすると中には、
「女性として生まれてきて損をしたと感じたことが今までにたびたびあった。今度生まれ変わるなら男性がいい」
といった感想を持った人もいるかもしれません。
いずれにせよ、あまりにも当たり前のことであるがゆえに、女性であることをことさら意識しない、という人が多いのではないでしょうか。
では、なぜ私がこのようなお話をするかというと、今回の人生で女性として生まれてきたことにはとても意義深いものがあるからです。
スピリチュアルの世界の視点で言うなら、これまでのいくつかの前世で積み重ねたカルマによる定めに従い、今生で女性として生を受けたわけです。
今こうして今生に生きているということは、自分のカルマの解消、つまり、悪い部分を直すためにこの世に生まれて来たわけですから、言い換えるなら、神様から「女性として修行をしてきなさい」と言われて、あなたはこの世に誕生した、とも言えるわけです。
そして、男性の人生も悲喜こもごもですが、女性の人生もまた悲喜こもごもです。ただ、女性のたどる人生の道は男性のそれとは違います。
そのことを念頭に置けば、人生における修行の中身も、まさに女性として生まれてきたからこそのもの、ということもその原点にあると言えるのではないでしょうか。
また、私はこれまで書籍や講演などをとおして、「自分の欠点や間違いに気づいて直して欲しい。魂の汚れに気づいて欲しい。そうすれば必ず幸せな道を歩むことができる」ということを繰り返しみなさまにお伝えしてまいりましたが、その欠点や間違いも、女性として生まれたがゆえの特質ということを考慮して考えてみると、より気づきやすいのではないかと思います。
つまり、女性として生まれてきたことを運命ととらえ、そうであるがゆえに「男性とは違うカルマの道のりがある」ことをしっかり意識して、それを乗り越えるための努力に力を注ぐことが、幸せな方向へ進むためには大切だということです。
とはいえ、女性として生まれてきたのだから、何があっても耐え忍びなさい。それが幸せになるためには必要なのですよ、というわけではありません。
親や夫、子供に従って生きる地位に甘んじるしかなかった時代ではなく、今生、女性として生き生き伸びやかに生きられる時代に生まれてきたのです。偶然にそうなったのではなく、これもまた運命なのです。
そのようなことを踏まえ、この機会に改めて、女性の特質を見つめ直し、女性であるがゆえの葛藤や苦しみ、悲しみの中で、定められたカルマを乗り越えるためには、どんな生き方、行い、言動、考え方が必要なのか、また、注意すべきところはどんなところか、といったことを考えていただきたいと思います。
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