頑張れば、どんなことでも実現できる__。
人を励ます際によく使われる言葉ですが、残念ながら現実はそう容易いものではありません。もちろん、頑張れば何とかなることも数多くありますが、どんなに努力しても手にすることが出来ないものもあると知ることが大切です。
相談者のあるご婦人は、子供の頃家が貧しかったため中学卒業とともに就職。長女として、弟妹を進学させるため夜間高校に通いながら仕送りを続け、結婚後も子育てをしながらずっと辞めずに仕事を続けてきたといいます。それなりの苦労はしたものの、弟妹の面倒を見てきたことへの自負もあり、充実した社会生活を営んできたつもりでした。
ところが自身に学歴がないため、いつまでも出世の道がないことに改めて気づかされたのです。幹部候補として入社してきた大卒者たちに先を越される日々に、少しずつ虚しさが募り、それで子供の独立を機に、専業主婦のなろうか迷っており神殿にやってきたのです。私が神様に伺うより前に、相談者に「お仕事は楽しくはないのですか?」と尋ねると、女性のふっくらしたお顔がパッと華やいで、会社での楽しいエピソードを矢継ぎ早にいくつか話してくれました。
すでに答えは出ているかに思えましたが、神様にお聞きしてみると、やはり、生き生きと楽しそうに働いている女性の姿が見えます。同僚たちと笑顔で語り合う彼女は、今、目の前に自信なげに座っている人と同じとは思えないほど、充実した毎日を送っているように感じました。
人は無いものねだりを始めると、「足りないものだけに意識が集中してしまう」といった悪いサイクルに囚われることがあります。まさに彼女も、そのサイクルに巻き込まれたのでしょう。「仕事が好き」という自分の本当の気持ちに素直になれず、どんどんマイナス思考になってしまっていたのです。
私は小学生の頃、親に買ってもらった大切な雨がっぱを同級生の女の子にカミソリで切られたことがありました。その女の子が後々に話してくれた理由は、皆が貧しかった時代に、蓋で中身を隠さずにお弁当を堂々と嬉しそうに食べる私が、とても贅沢に見え、妬ましかったというのです。その当時は、私も含めて誰もが質素なお弁当を持ってくるのが当たり前でしたし、中にはお弁当を持って来られない子供もいました。
それでも私は、決して贅沢でない自分のお弁当がおいしかったのです。目の前にあるものに感謝すれば、足りないものにイライラすることもありません。感謝を持つ人間と不満をつのらせてばかりの人間の心には、大きな違いがあるのです。
「あなたは会社で、とても楽しそうに過ごしているように思えますが、仕事の内容に不満でもあるのですか? 同僚の方々とも良好な関係が築けているようですし、会社を辞めたいと本当に思いますか?」。私がそう尋ねると、同じことの繰り返しだけでは成長のない人生を送っているようで、虚しさが募ってしまったとおっしゃいます。細かい仕事が得意で事務職が転職のような彼女は、
「子育てがひと段落したことでふと気が弛み、好きだったはずの仕事の充実感を忘れ、隣の芝生が青く見えたのかもしれません」と、仕事に対する熱意を取り戻してくれました。
健康な身体、大切な家族、そして大好きな仕事。今あるものに感謝する心の素晴らしさに気づければ、自分の縁にもおのずと感謝できるのです。
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