高齢化社会になって、認知症の親を抱えた人も増え、家族による介護の難しさが問題になっています。
施設などの受け入れ体制の問題もさることながら、家族が介護をする場合、認知症の当人には記憶力や判断力の低下があって、家族にとって適切な対応の仕方がわからなくなってしまうことがあるからです。
認知症といっても、程度によって状態が違い、何でもかんでも忘れてしまうわけではありません。
しかし、面倒を見ている家族としてはついつい注意するのが習慣になって、いつも怒ってばかりになる、といったケースも多いようです。そうなると、当人が余計に萎縮し、いじけてしまって、親子関係が悪化してしまうこともあります。
以前、こんな相談がありました。
認知症になった夫の母親の面倒を見ているお嫁さんが、義母が自分の言うことを聞いてくれないと、いつもご主人(夫)に文句をぶつけていたそうです。
それを知っていた義母は、口では嫁に対抗できないので、何をしたか……。
ある日、嫁にお風呂に入れてもらっていた時に、浴槽の中で排便をしたのです。
わざと義母が嫁を苦しめるためにしたと言っては嫁が怒る。お嫁さんはその汚れを洗い流すのではなく、わざわざ義母の息子であるご主人を呼んできて、こんなひどいことをしたと訴えます。
その現場を見た息子は、カッとなって、認知症のお母さんに暴力をふるった。
お母さんは抵抗できずに悲しい表情をしながら、あれほど慈しみ育てたはずの息子に身体をつかまれ、ふりまわされ、殴られている。
そんな義母の姿を満足げに見ているお嫁さん……。
ところが、義母は、今度は仕返しとばかり、夜はオムツをしているのにもかかわらず、布団に排便をして、汚物を手で塗りたくる。
そのようなことがずっと続いていたと言います。
これは明らかに意識してやっていることで、どんなに年老いて認知症になったとしても、本人にはプライドがあるということです。誰でも、八十歳、九十歳になっても人から怒鳴られたり叱られたりしたくはないでしょうし、まして我が子からの暴力は血の涙を流すほど無念なのです。
ましてそれまで嫁との関係がうまくいっていなかった場合には、なおさら感情のしこりが残ってしまうでしょう。
関係が極端に悪化してしまった場合には、お互いに距離を置くためにも施設にお世話になるのも一つの方法かもしれません。
更にもっとひどい場合は、家庭で介護を受けていた親が、家族に遺書を残して家の玄関で首つり自殺をしたというケースもありました。
自分に対して辛く当たった嫁や息子に対して、「一生、恨んでやる」と遺書を残して……。その姿を見たお嫁さんは、ショックで精神バランスを崩しました。
これは実際にあった話ですが、この場合は、決してお嫁さんだけに問題があったわけではありません。
それまでの家族の間の関係がどうであったのか? どんな関係を築き、話し合いをしてきたのか? そこに大きな原因があったとも言えるのです。
私も自分の父親を家で看取りましたが、介護はお年寄りと会話をしたり、オムツを交換したり、お風呂に入れるなど、心身共に大変な重労働です。
お互いに気を使いますし、家族だからという甘えも出て、それだけに難しい面があります。ですが、お互いにプライドや見栄を捨てて、心と心を通い合わせるように努力することで乗り越えられる面もあるはずです。
そこで一番大事なのは、夫、妻のいずれの親に対しても、「いずれ行くわが道」という気持ちで許すこと。そして、人生の先輩として尊重する気持ちを忘れないことではないでしょうか。
これは “当たり前のこと” のようであっても、日々の重労働の中でつい忘れがちになるので、ことあるごとに自分に言い聞かせ、よくよく心に留めておくべきことだと思います。
「運命が丸裸になる」と、
驚きの声、声、声!!
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