ここでは、「身近な間柄だからこそ気づきにくい点」についてお話ししたいと思います。
それは家族関係、中でも親子の間のすれ違いで、ここでは息子さんの問題で相談に来られたUさんご夫妻の例を挙げます。
相談内容は、おおよそ次のようなことでした。
息子(E君)は三十代後半で、妻もいる。けれど、これまで一つの仕事を長く続けられずに職を転々としてきた。
E君は、これから「自営で農業を始めたい」と言っていて、両親(Uさん)に資金面で協力してほしいと相談してきた。
E君夫妻は、現在両親と別に暮らしているが、妻(嫁)の希望もあって、E君の親との同居を希望している。
親であるUさん夫妻は、どうしたらいいか困っている、ということでした。
その日、拝殿に入って来られたお二人と向きあってから、私は「申し込まれたご相談内容はE君の農業を始めることについての件ですね?」と、受付け時に聞いていることを再確認しました。
ところが、Uさんのご主人は、私の質問に反応することなく、「私は息子が農業をやるのも、同居するのも反対で……」と自分の感情論を述べてきたのです。
私は、相談の申込み内容だけ確認してからすぐに透視に入るつもりだったのですが、ご主人は私の言葉の意味をまったく考える様子もありません。
それからしばらく両者の間で、言葉のキャッチボールができないやりとりが続きました。
そこで、
「ちょっと待ってください。傍らでお話を聞いている奥さんは、今の私たちの会話の違和感に気づきましたか?」
「いえ……?」
「ここに、あなた方の子育ての失敗の問題が隠れていることを……」
「……?」
私が何を言いたいのかお二人にはまったくわからないようだったので、まずそこから説明することにしました。
「私が初めに『相談内容を確認させてください』という言葉が耳に入っておらず、自分の考えを述べ続けていることに気づいていないのです。
奥さんが電話で用件を申し込んでありますので、それを確認することと、お二人の考えを聞くこととは別問題なのです」
「はぁ……」
私の話す意味がまだわからないようなので、私は相手が理解できるようにと本人たちが望む内容から会話を始めてみました。
「農業にまったく経験のない息子さんに自分たちの居住する家の土地を担保にして借金をすることは不安である。失敗したら両者がすべてを失うため困る、ということですね?」
「はい、そうです」
「それはもっともなご心配です。まず、神様に聞いてみましょうね」
そして、神からの回答を伝えたところ、この件については納得し、それは終了しました。
そこで、なぜ息子さんが農業を始めようと考えたのか、問題の原点について話を進めることにしました。
「息子さんが、学校を中退したり、転職をくり返したりの中、『なぜ、こうなったか』を考えたことはありますか?」
「…いえ…?」
ご主人は困った表情で、私の話が「???」の様子です。
私は話を続けました。
「次です。今、私の目に見えますお宅の光景が、お部屋の数が多くはないんです。ごめんなさい、失礼ですが……。加えて、激しい気性の息子さんの姿も見えます」
「はい、そうなのです! それも気になるのです。だから同居したくないのです」と母親。
「そのような中で、若い人たちの夫婦生活についても考えてみれば、同居するのは、お互いが窮屈で息が詰まる姿が見えます。
親子がそれぞれ狭い家の中の隣同士で夫婦関係をもつことなどについても、同じ女性の立場でお嫁さんに対して『大事なことだから考えてみて』と、そっと陰で話してみることも大切ではないでしょうか。夫婦関係という、この意味わかりますね?」
「はい、わかります。それは大事なことだと思います」(母親)
「次です。E君がなぜ転職をくり返してきたのか。彼が幼稚園の頃の姿が見えます。
とても素直でお母さん、お母さんと慕ってくる、とても純真な子供。可愛くて、こんな姿をして甘えて走ってくる姿が見えます」
「はい、その通りです」(母親)
「でも、幼稚園では、家とは違って元気いっぱいで、けっこうわんぱくで、いたずらが多く、先生に注意されている姿が見えます。母としての失敗も見えます。
なぜか? それはあなた(母親)が怒り過ぎるから」
「はい、そうなんです」(母親)
納得している様子の奥さんに対して、憮然とした表情のご主人。
「息子が農業をやろうとしていることと、それが何の関係があるのか?」と思ったようです。私はご主人を責めているのではなくて……。問題の原点を理解できないと何度も同じ失敗をくり返すことになるため、どうしても理解してほしいのです。「関係ないことを言う!」と思うのではなく、そこに “気づけない心の過ち” があることに気づいてほしいのです。
「農作物を作ったとしても、流通のことが問題になります。そこで人との接触ができないといけない。E君は人との交流がうまくできない。だからうまくいかないのです。わかりますでしょうか?」
二人共、黙って頷きます。
ここまできて、ようやく理解しはじめたようです。
「ゆっくりと息子さんと話し合ってみてください。そのうえで、今までなぜすぐに仕事を辞めてしまったのか? なぜ失敗するのか? よく考えてください。農業をやってもまた何をやっても、人との交流なしで生活できないことを教えてあげなくては__。
あなた方は、息子さんが農業をやりたい、同居をしたいと言うけれど、それは困るということだけで、その困るのは自分たちが困るから嫌なのであって、どうしてこの子はこうなったのだろう、どうしてあげたら失敗しないようになるのかということを考えてここに来たのではないのです。今まで、息子さんの心の苦しみを推しはかってこなかった点もあったようで、申し訳ない言い方ですが、親として不足があったのではないでしょうか?」
「はい、そうですね。ようやくお話の意味がわかってきました」(ご主人)
私はしみじみ思いました。
「大切に思うはずの自分の息子さんなのに……。ものごとの表面だけしか見ず、息子さんの心を考えなければ、何の解決もできず、再び原点からの苦しみが起きてしまうところだった」と。
苦しみをくり返さないためには、まず第一にその原点を知ることが大切です。
ここでの問題は、「自分でよかれと考えていたことが、そもそも原点において誤っていた、ということを知らなかったこと」です。
私たちは誰にしても、知っていて間違いをおかす人は少ないはずです。もし、「知っていて」であれば、それは間違いではなく故意にすることであって、一方、「知らなかった」ことについては知識不足からくるのであり、知識を深めることによって私たち人間は「幸せになれる可能性」がたくさんあるということを声を大にしてお伝えしたいのです。
Uさん夫妻の例を出して説明してきたのは、読者の方々にとってもいろんな面で勉強になる、人との交流についての参考になる点があるのではないかと思うからです。
もちろん、本人の許可を得てのことです。
身近な人、特に肉親に対しては、「わかってほしい」「わかってもらっているはず」などの甘えや慣れがあるので、とかく感情的になってしまいがちです。
それと同時に、家族として同じ家庭の中の文化に育ったがゆえの知識不足もあります。
また、まったくそこまでも考えることなく、「子どもがうまくいかない理由は自分たちの育て方とは関係ない」と思い込んでいたり、その原因をつかもうともせず、子どもの考えに対してただ感情的に拒否はすれども、対処方法を考えることもできず、親としてどうあるべきか、どう接したらいいかがわからない方々が多いようです。
そのように、子育てで苦しんでいる方々の中には、その源を知ることができないまま、同じ失敗をくり返している方も少なくありません。
夫婦関係においても、慣れの中でお互いに言葉のキャッチボールをせずに、相手は「こうに違いない」と勝手に決め込んで、何かあると相手の非ばかりを指摘して自分の非には気づかない……。
ここに、肉親であるがゆえに陥りやすい「心の落とし穴」があります。
肉親間のトラブルが起きたり、行き違いが生じた場合、そこでいったん立ち止まり、冷静さを取り戻すことによって、心の落とし穴にはまらずにすみます。
そして、
最も身近で大切な関係である人・家族とのすれ違いには、何かしらのカルマが潜んでいる」
「現実に起きているできごとは決して自分と無関係ではなく、自分にとって何らかの意味がある」
そう考えることによって、新たな角度からの発見や気づきが得られます。
身近な人たちそれぞれが、お互いの魂を高め合うために、自ら選んで今、この場に生まれてきているからです。
そう考えれば、お互いの心の状態がより冷静に見られて、心と心を通い合わせることができるはずです。
これが、身近な人との交流を通して「心を養う」ということの意味です。
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