〝妬み〟——。
これは、地球上に生きるすべての人々が持つ負の感情です。人が持つ悲しい性であるといってもよく、世の中に満ち溢れているといっても過言ではありません。〝妬み〟を表す言葉を考えてみても、嫉みや僻み、嫉妬、悋気、焼きもちなど、すぐにたくさんの言葉が思い浮かんできます。これはひとえに、他人を〝羨む心〟が、世の中にたくさん存在していることの証にほかならないのです。
人類はこれまでの長い歴史のなかで宗教を拠り所としてきましたが、どの宗教においても、〝妬み〟を人間の欠点として捉えています。例えば仏教の教えでは、この嫉妬心も克服すべき煩悩のひとつとしていることは有名ですが、キリスト教の聖書でも、この感情について言及されています。
彼らの根幹には、アガペー(隣人愛)という考え方があり、「ひとりを許し愛せ」と教えています。つまり、愛を説く宗教なのですが、〝妬み〟はその対極にあるものとし、人間の最も汚い部分で遠ざけるべきものであると、規定されているのです。
また、三大宗教のひとつであるイスラム教の世界でも、「嫉妬は心の不純物であり、害をなすものである」と聖典に書かれており、最もポピュラーな一説として親しまれているそうです。
このように、洋の東西を問わず、〝妬み〟に対する警鐘は古くから行われてきました。事実、人間関係のトラブルにおいても、人を羨ましく思う心、つまり〝妬み〟が根っこに流れていることは多く、私のもとに持ち込まれる相談のなかで、常に上位を占めています。
以前、ある中年の男性(以下、Kさん)が相談にいらっしゃいました。Kさんは建築業を営んでおり、順調に業績を伸ばされてきました。大きな案件も入るようになってきたときのことです。昔からつき合いのある内装業者の社長さん(以下、Lさん)がKさんを訪れました。彼とは、まだ会社が黎明期であった頃に苦楽を共にしており、ただの取引先を超えた、いわば戦友のような存在です。Kさんも彼の突然の来訪をとても喜んだといいます。
当初は昔話に花を咲かせていたのですが、KさんはすぐにLさんの様子がおかしいことに気がつきます。そこでどうしたのかと尋ねてみると、彼は意を決した顔つきをして、「ホテル建設を受注したと聞いた。うちに内装を請け負わせてくれないか? 」とおっしゃったそうです。
これを聞いて驚いたのがKさんです。確かに、すでに当時は大きな仕事を受注するようになっていたそうですが、ホテルの案件などは寝耳に水で、そんな話はまったく影ひとつなかったそうです。もちろん、Lさんには誤解であることを伝え、次に何か案件が入れば依頼すると約束したのですが、Lさんは引き下がりません。いっこうに信じてくれず、頼むから受注させてほしいと懇願されたと言います。
ほとほと困り果ててしまったKさんは誤解を解くために、その話を誰に聞いたのかを確認しようとしたそうなのですが、「いや、確かな筋から聞いた」と答えるのみで、頑なに噂の出所を教えてはくれませんでした。
そこでKさんは思い当たります。同じく、古くからのつき合いがあり、Lさんの会社ともいっしょに仕事をしている同業者が、会社を成長させたKさんを妬み、「あいつのところは仕事が雑だ」などと、悪く言っていると耳にしていたのです。もちろん、それは全くの事実無根です。むしろ、丁寧に仕事をしてきたからこそ、Kさんの会社は業績をあげることができ、今の規模を築くに至ったのです。
その同業者がありもしない噂話を流し、嫌がらせをしてきた可能性は非常に高かったのですが、確証のないことですKさんとしては、誤解である胸を伝えるしか術がなかったと言います。そして最後にLさんは「友達甲斐のないヤツだ! 」と暴言を投げつけ、帰っていってしまいました。
その後、Kさんは関係を修復すべく、Lさんを飲みに誘ったり、その同業者にも連絡を取ろうとしたのですが、すべてうまくいかず、大切な旧友を失うことになってしまったと言います。
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