セックスが先行するような交際をしていたカップルが、子どもを持つ心の準備がまったくないまま妊娠し、深く考えもせずに「できちゃった婚」をすることがあります。そういった中には、精神的に幼いままの状態で出産したがために、我が子を虐待してしまうケースがあります。
結婚前も、家のことをやらずにわがまま三昧で暮らしてきましたから、子どもが産まれても、すぐに気持ちを切り替えられないのです。
ですから、遊びに行きたいし、友達と飲みにも行きたい。そういった気持ちを無理やり抑えながら育児をするわけです。
そして、そんな気持ちを逆なでするのが、ご主人の行動です。ご主人も若くして父親となったために、父としての自覚ができていませんから、子どもができても、連日、友人と飲みに行くなど、独身時代と変わらないペースで好き勝手に遊び歩くわけです。
自分は髪を振り乱して子育てをする横で、自由気ままに過ごす夫を目にするうえ、経済的な余裕がないこともストレスに拍車をかけるようです。
そういったようなことから、「なんで私ばかり我慢しなきゃいけないのよ!」といったうっぷんが溜まっていき、やがて、子どもさえいなければ遊びに行けるのに、といった発想になってしまうのです。
その挙げ句、なんとも嘆かわしいことですけれども、自分の子どもを邪魔者扱いしてしまうのです。
要は、本気で子どもがほしくて産んだわけではないので辛抱ができないのですが、自分の思いどおりに生活できないストレスのはけ口として、赤ちゃんを叩いたりつねったりと暴力を振るようになってしまうのです。
暴力がエスカレートし、子どもを虐待死にいたらしめるケースもありますが、パチンコ店の炎天下の駐車場の車に乳児を入れたまま、自分は朝から晩までパチンコに興じ、我が子を死なせてしまうようなケースもあります。そのような痛ましいニュースを目にし、耳にするたびに、本当に胸が痛みます。
その一方、子どもをしっかり育てたいという気持ちが強すぎるあまり、些細なきっかけから育児ノイローゼになり、その延長線上で虐待をしてしまうケースもあります。
ここまでいったらもう救いはないと思うかもしれませんが、どうか諦めないでください。
私のところにいらっしゃった相談者で、虐待の悩みから明るい方向へと歩まれた方がいます。
その方は、32歳の女性。赤ちゃんを母親に預けて、ひとりで相談にいらっしゃいました。
お化粧っ気もなく、見るからにやつれたご様子で拝殿に入って来ましたので、これは簡単な悩みごとではないぞ、と気を引き締めてお迎えしたことを、まるで昨日のことのように鮮明に覚えています。
さっそく相談内容をお伺いすると、その方はこんなことを話し始めました。
「今日は、1歳になる娘のことで相談に来ました。実は、その娘を殺してしまうのではないかと恐ろしくなって、いてもたってもいられなくなって思い切ってここに来ました」
そこまで一気に言うのですが、その先が続きません。そこで私は、
「どうして、そう思うのですか?」
と尋ねてみました。すると、しばらく沈黙が続いたのちに、彼女は震える声でこう言いました。
「私、娘を布団に叩きつけてしまうんです。こんなことは止めなくちゃいけないと分かっているのですが……。自分ではその気持ちが抑え切れなくて、何度も何度も娘を叩きつけてしまいます。このままだと、しまいには娘を殺してしまうんじゃないかと思って、もう怖くて怖くて……」
彼女の説明によると、布団を何枚も積み重ねたところに娘さんをぶつけるようにして上から落とすのだそうです。
そして、現在、精神安定剤を飲んでおり、さらに、娘さんを叩きつける布団は柔らかいものを選んでいるというのです。
精神バランスを崩していますが、まだ常識を判断できる心は残っているのです。親として、人としての心まで失っているわけではなかったのです。
これなら、まだ救えるに違いないと思い、さらに、
「ご家族にはこのことを伝えていますか?」
と聞くと、まだ誰にも言っていないと言います。
そこで、何が彼女の救いの道になるのか、と神に聞きました。すると、
「ご主人に相談してみるがよい」
という答えが返ってきました。そこで私は彼女に、
「悩んでいることを、ご主人に話してみてはいかがでしょうか。それが、解決の糸口になるはずです」
と伝えたのですが、彼女は、すぐには納得できないといった様子でした。
というのも、大切な赤ちゃんにこんなことしていることを打ち明けたなら、ご主人はきっと自分のことを見限るだろう。離婚を切り出されるに違いない、と彼女は怖れていたのです。
しかし、彼女の思いは真剣でした。娘の命を守りたい、自分も救われたい、と一大決心をしたのでしょう。
その日から1ヶ月ほどたったある日、今度はご主人を伴って、彼女は再び私の元を訪ねていらっしゃったのです。
ふたりとも神妙な表情でしたが、ご主人の瞳には強い光が宿り、並々ならぬ思いでここに来たことを物語っていました。
そこで私はまずご主人に、
「奥さんが育児ノイローゼになっていたことに、ご主人は気がついていましたか?」
と尋ねました。すると、そのご主人から、
「いいえ、まったく気がついていませんでした。一緒に暮らしているのに気づいてやれなくて、かわいそうなことをしたと思っています」
という正直で誠実な答えがすぐに返ってきたのです。さらに、ご主人はこう続けました。
「でも、妻がここに来てくれて本当によかったです。ひとりでつらい思いをしてきた妻を、私はなんとか救いたいんです。そう思って今日は来ました。私は何をすればいいのか、どうぞ教えてください」
そう言いながら頭を垂れるご主人の前向きなご質問、奥さんを気遣う言葉を聞いて、私もうれしくなりました。
「よくおいでいただきました。ご主人の奥様を思いやるその言葉、気持ちに私自身胸が一杯になる思いです。ご主人がそのような考えで奥様を支えてあげれば、きっと奥様は大丈夫ですよ」
そんな私の言葉に、それまで張りつめていたご主人の顔に安堵の表情が浮かびました。そして、
「ありがとうございます。ふたりで頑張っていきます」
とご主人が言うと、今まで黙っていた奥さんが、
「あなた、私のことを許してくれるんですか」
と叫ぶような声を上げてご主人の腕にすがりつき、嗚咽を漏らしていらっしゃいました。
ご主人の理解と温かい心で、どれほどこの奥さんの心が癒されたことでしょうか。
万が一、育児ノイローゼや虐待にまで追いつめられてしまったら、そこから脱するには周囲の助けが必要です。特に、配偶者であるご主人の協力や理解は大きな力となります。
ですから、まずはひとりで抱え込まず、周囲に助けを求めることです。
子どもを持つということは、幸せを運んでくれる面がある一方、人の子の親になるという確固とした覚悟がいるものです。
そして、楽しいことばかりに見える子育ても、実際にやってみれば忍耐の連続です。
戦後の物がなかった時代の女性は、たらいでおむつを洗い、子供を背中にひもでくくって掃除をしていました。欲しいものもなかなか手に入りませんから、日々を過ごすことで自然と辛抱する心の強さを培っていけたのです。
それに比べ、今は豊かな時代です。お金がないといっても、昔に比べればまだ贅沢ができています。
ただ、便利になった代わりに心を逞しく育てることが疎かになり、それがさまざまな悩みの根本的な原因を作っています。
しかし、前向きに考えるなら、子どもを持つことによって、自分の心の甘さ、いたらなさに気づくチャンスを与えられたと考えることもできるわけです。
心の軸をしっかりと立て、かけがえのない貴重な経験として取り組んでいきましょう。
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