最近では、躾なども学校でするべきだ、と考える親の声を耳にしますが、学校というのは勉強や集団行動を覚える場です。ですから、躾など、家庭での学びが子育てにおいてとても大きなポイントだと思います。
今は共働きの家庭も増えていますし、生活自体も大変、便利になりましたが、昔はお釜でご飯を炊き、たらいで洗濯をするような働きずくめの日々を送りながら、母親は子どもの躾をしっかりとしていました。
貧しいながらもそのように過ごす中で、年長者を敬いながら、家族それぞれが努力や忍耐をしながら協力することを覚えたわけです。
また、拝殿では、我が子の将来によかれと考えて、一生懸命、子どもに習い事をさせる親とも数多く接しております。
これも大切なことだとは思います。しかし、習い事は将来の幸せのためのものといった考えでいると、習い事で伸び悩んだときに、子どもに挫折感を味わわせてしまうことがありますので、そこのところには注意が必要だと思います。
私は、家庭教育においては、何よりも物事のケジメを教えたり、正しい判断力、理解力を養わせることに十分に力を入れていただきたいと思っています。
これは、家庭における親子の日常の会話の中で教えていくべきことだと思います。
そして、子どもが小学校に入る年齢になったら、親としてもっとも気になるのは、やはり成績のことではないでしょうか。
テストがあったと知れば、どうしても点数が気になります。子どもが学校から帰っても遊んでばかりいるようなら、つい「勉強しなさい」「早く宿題をやりなさい」と言いたくもなるでしょう。
それは、親として当然のことと言えると思います。
しかし、誰のための勉強であるのか、なんのために勉強をするのか、どうして知識を得ることが大切なのかを子どもにしっかりと伝えてあげてほしいのです。
親としては、本来「子どもの幸せが一番の目的」であるはずなのに、ついつい点数のことばかり気にしてしまい、「今度のテストでいい点数をとったら、あなたがほしがっていた◯◯を買ってあげるよ」などということを言っていると、いつの間にか、親にほめられるための勉強、また、物をもらうためだけの勉強になってしまいます。
でも、勉強は本来、自分のためにするものです。そういうことを、小さい頃からきちんと教えていくことが、やがて、中学校や高校受験のときにもしっかりと生きてくるのです。
たとえば、幼児から小学校、中学校へと進む過程の中で、親が学生時代に体験した失敗談や、泣いたことや頑張ってきたことなどを、昔話を語るが如くに少しずつ伝え教えていくのもいいでしょう。ただただ「勉強しなさい」というよりも、余程、子どもの心に残るのではないかと思います。
また、運命の山や谷が人それぞれあるように、成績が伸びる時期はその子どもによってまちまちです。
スタートダッシュが早くても、やがて中学生、高校生になるにしたがって成績が下がっていってしまう子もいれば、最初はぱっとしなくても、徐々に実力をつけていく子どももいます。
つまり、才能の花、努力の花がいつ花開くかということは、親が決められるものではないのです。ですから、親は焦ることなく、見守ってあげる必要があります。
たとえば、子どもにひらがなの「あいうえお」を覚えさせるときに、子供が「あ」と書くか書かないうちから、
「そんな書き方じゃだめじゃない、書き方が違うでしょ。見ていてごらんなさい。こう書くのよ」
と、子どものペースを待てない親がいます。
それだけでなく、
「何ぐずぐず書いてるの。早く書かなきゃだめじゃない」
と、怒る親もいます。
自分では教えているつもりでも、そんな言葉を次から次に浴びせていては、子どものやる気や、覚えようとする能力を奪ってしまうことになるのです。
子どもは子どもなりに一生懸命覚えようとしているのに、これでは逆効果です。親の気持ちに余裕がないばかりに、感情的な言葉で子どものやる気の芽をつまんでしまったり、子どもを勉強嫌いにしてしまっては、親が本来望む「子どもの幸せが一番の目的」のつもりが、あらぬ方向にそれてしまうことになりますし、子どもの感情を傷つけることにもなるわけです。
ただし、中には勉強をすることに意欲を見いだせない子どももいます。そのようなときはまず、その理由を把握することが大事です。また、意欲を引き出すことも考えてみてください。そのためには、勉強することはなんのためかを伝えるだけでなく、家庭に中で何かの役割を与えるのもいい方法だと思います。
そして、きちんとできたら、必ず、
「お母さん、本当に助かるわ。お父さんも喜ぶと思うよ。本当にありがとう」
と言葉をかけてあげてください。そのようにして、物事に対する意欲を促してあげるうちに、本人の中からやる気が出てきて、子ども自身も安心するはずです。なぜなら、子どもは「周りの子のように自分も勉強したいのに、なんで自分は勉強する気が起きないんだろう?」といったことで悩んでいる可能性も大いにあるのです。そのような子どもの声なき悩みにも気づける親でいてほしいと願っております。
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