これは多くの人が気づいていないことなのですが、ぼんやりと自分の頭で何かを考えていても、テレパシーでもない限り、あなたがいま考えていることは人には全く伝わりません。
自分が思っていること、抱えている感情、嬉しく感じること、悲しい出来事。
どうぞ出来るだけたくさんの言葉であなたが日々感じていることを正確に伝えようとする訓練を怠らないでください。
拝殿にはいろいろな人がいらっしゃいます。
溢れんばかりの言葉を持っているのに、自分の本当の気持ちから逃げ続けてきたために、どんなに言葉を尽くしても全く自分の状況を伝えられない人、逆に自分自身については深く理解していても、それを表現する訓練をしてこなかったために、あまり言葉を持たない人。
その人たちが話す言葉は、その人たちが過ごしてきた人生そのものと言えるかもしれません。
困ったことや知りたいことがあって、わざわざ青森まで相談にいらしたのに、「よい人だと思われたい」という気持ちが邪魔をして、自分が本当に聞きたいことが聞けない人もいらっしゃいます。
本当は「不倫している相手と結婚したい。相手は絶対に近いうちに妻と別れると言っているが、いつ別れてくれるのか」ということが聞きたいのに、「私はいつ結婚できますか」というような聞き方をなさる女性もいらっしゃいます。
そう聞かれれば、私は「相談者の結婚の時期」を神にお尋ねします。
すると、結局妻と別れるというのはその男性の嘘であった場合、もとから結婚の縁はないわけですから、お別れすることになる不倫の相手のことは素通りし、相談者が縁のあったお相手と結婚する年齢だけをお答えすることになります。
相談者からすると、想定している結婚相手は、現在不倫中の男性なわけですから、私の答えを聞いて、「五年後には〈今付き合っている相手〉と結婚してもらえる」と思い込んでしまうのですが、私に視えているお相手は、いま付き合っている男性とは全く違う人であった、というようなこともありました。
このような曖昧な相談の仕方は、「自分の格好の悪いところは人に見せたくない」「自分を良い人だと思って欲しい」と思う心が過剰なためではないでしょうか。
この「誰にでも良い人だと思われたい」という思いを抱える人は、ここ最近、どんどん増えているように感じます。
周囲にいる誰からも「良い人」だと思われなくては、という気持ちが大きくなりすぎる、心の病になってお母さんと一緒に私の拝殿を訪れた男性がいました。
一緒に相談にいらしたお母様曰く、子どもの頃からまったく手のかからないいい子だったといいます。
一緒に暮らしていた祖父母の介護で忙しいお母さんのために、妹と弟の面倒をよく見て、小さい頃から近所でも評判の優しいお兄ちゃんだったとか。
一度だって「勉強しなさい」と言ったことがないのに、国立大学の医学部に現役合格し、奨学金を得て、親に全く金銭的な迷惑をかけずに医者になった自慢の息子が、急に無気力になり精神を病んでしまったなんて信じられない、というのです。
絶対に何か悪い霊がとり憑いているに違いない、と必死に私に除霊を懇願し、ついには泣き出してしまいました。
その間、息子さんは一言も言葉を挟みませんでしたが、母親が泣き出すと、そっと母親の肩に手を置いて背中をさすってあげていました。
神にお尋ねすると、小さい頃から自分を殺して、とにかく周りからいい子だ、偉い子だ、と褒められることだけに執着しているのが見えました。
子どもの頃から非常に能力が高かったので、褒められれば褒められるほど、周囲の人が自分に失望するのが怖くて仕方なくなってしまったのです。
ほんの一握りの人を除いて、どんなに立派な人でも、二十四時間、人のために尽くし続けることは出来ません。
自分のために食べ、眠り、楽しみ、時には我が儘に振る舞える時間を持ててこそ、人に尽くすエネルギーを充電できるのです。
私は男性に、視えたことを話し、「いま一番自分のために何がしたいか」と聞いてみました。
しかし、男性はポツリと「分かりません」と言うばかりです。そこで、お母さんに、とにかくいま息子さんは自分のために時間を使うことを学ばなければいけないこと、「過度に皆に好かれる人間でいたいと思うがゆえに、精神を病んでしまったのだ」と諭しました。
そして本人にも「あなたが皆からいい人だと思われたいという思いを捨てられないのは、あなたのプライドが高すぎるからです。その欠点に気づいて、自分は何でも出来るという万能感から抜け出せば、病気は治りますよ」と言いました。
自分が何をしたいか、何を大事に思っているのか、ぼんやり頭で考えるだけでなく、いま言葉に出してみましょう。
それが分かれば、誰にでもいい顔をしようとしているのは、自分のエゴだということが腑に落ちるはずです。
そして、「イヤなことやできないことは、はっきり断る」ということも出来るようになります。
自分にムリをさせていませんか。本当は断りたいのに断れなかった、という経験がなぜ起こったのか、思い出せる理由を考えてみてください。そこに「いい人と思われたかった」というカルマは潜んでいませんか。
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